• 上総國一之宮 玉前神社

【読み物】「全てにおいて神事が優先。それが神職という職業」玉前神社 伊藤神職インタビュー①

最終更新: 2019年5月4日


今回より全5話に渡って、玉前神社の伊藤神職に神職になったきっかけ、古事記神話のことや祝詞に関してなど、色々なお話をお伺いいたしました。今回はその一回目。


玉前神社 神職 伊藤康之


もともとは教師を目指していたんです。

ーそもそも神職になろうと思ったきっかけはどのような理由からだったのですか?


実は最初から神職を目指していた訳ではなく、もともとは教師になりたいと思っていました。私は高校時代は野球部に所属していて、部活一色という生活だったのですが、いざ、進路を決める際、関東の人間だった私からすると、歴史好きも手伝って「関西方面の学校へ行きたかった」という気持ちが強かったのです。その中で調べていくと、三重県・伊勢の皇學館大学が教員になる方が多い学校だと分かりました。神職課程が取れるのも決め手の一つでした。


ー具体的に職業として「神職」を意識したのはいつ頃だったのですか?


はい。一年生の夏休みから、行っていた神社でのアルバイトで「面白い仕事だな」と感じました。ご存知の通り、皇學館大学は神社に就職される先輩も多く、アルバイト募集元の神社の宮司さんはじめ、先輩神職の方も皇學館大学の卒業生が多く、大学には神社からのアルバイト募集案内がいくつか出ていました。


ーなるほど。では、他の神社でのアルバイトもされたのですか?


いえ。ありがたいことに毎回その神社からお声を掛けていただいていたので、神社でのアルバイトはそちらの神社だけです。とは言っても、オフシーズンは募集が無いので、普段は伊勢で他のアルバイトやってましたね。具体的には飲食店やスーパーでの仕事でした。飲食店のアルバイトでは、ホールの接客から入ったのですが、気がついたら厨房で鍋を振ってました(笑)


ー神職になることを決断されたのは?


実は四年生のギリギリまで教師か、神職か迷っていました。そうこうしている内に何故か学校から呼び出しがありまして(笑)。何があったと恐る恐る話を聞くと、どうやらアルバイト先の神社から名指してで求人が来ていたようでした。


今年の夏越大祓 先頭が伊藤神職



神職という仕事は一生勉強、一生修行だと思います。

ーこうして神職としてスタートしたわけですね


はい。アルバイト先の神社でしたが、今度は正職としての勤務となりました。


ーアルバイトから正式な神職になるケースは多いのですか?


そうですね。アルバイトで神社の雰囲気も分かっていましたので、お世話になることを決断しました。他の神社さんはよく分かりませんが、私が勤務した関西の神社の場合、皇學館大学の繋がりで就職に至るケースが多いようですね。試験とかではなく、人物とか適性で判断しているようです。


ーアルバイト時代の実績が功を奏したのですね。


いえいえ。正式な神職とアルバイトでは仕事内容が違いますしね。國學院とか皇學館などの神職課程を持つ大学は、当時は卒業と同時に「明階」※1という資格が取れるんですが、各神社さんで実践経験を積みながら、神職養成機関で資格を取られる方もいらっしゃいます。そのような方から見ますと、「大学ぽっと出の実践経験の無い奴」が入ってきたということでしょう(笑)神職という仕事は実践できてナンボですから。

あと、神職の世界では「級」※2というものもあります。どちらかいうと、こちらの方が重んじられているかもしれません。


※1「明階」

神社本庁では規程により、浄階・明階・正階・権正階・直階の5つの階位区分がある。明階までは所定の研修を受けることにより昇進が可能。


※2「級」

上記「階位」に加え、神職には特級、一級、二級上、二級、三級、四級という身分の区分がある。身分の選考は経歴・神社界に対する功績をもとに行われる。因みに別表神社の宮司は二級上または二級という基準がある


ー伊藤神職は現在何級なのですか?


一昨年、二級を拝命いたしました。地域にもよりますが、貢献度や実績などを考慮して、二級をいただけるのは四十歳前後といったところでしょうか。民間企業では中間管理職のようなイメージかもしれません。ただ、そのために必要な研修を何度も神社本庁で受けなければなりません。最近では神社本庁の方針で研修日程の見直しがあり、研修も受けやすくなっているようです。認識は様々ですが、四十歳といっても一般的に神職の中ではまだまだ「鼻垂れ小僧」でしょうか。一般の職業と違うのは神職は定年が無いということもあり、六十歳くらいでようやく一人前というイメージです。六十歳と言えば、普通は定年ですよね(笑)


ー物づくりの職人のような感じでしょうか


近いかもしれませんね。一生修行、一生勉強していかなければと思います。


境内の神楽殿にて。お祭りの際にはこちらで神楽や雅楽奉納が行われる。

同じ事を、同じ様に、繰り返し毎日行うことが神職の仕事

ー以上のような経緯で神社界へ身を置くこととなった訳ですが、神職になられて初めての経験や、驚いた事などはありましたか?


先ず、何事にも「神事」が優先されるということですね。私たちは神様に仕える存在ですから、個人的なことより神事を重要視しなければならないのです。こう言ってしまいますと、とても特殊な職業で、プライベートが無いという印象を受けると思われますが、例えば、一般会社員の方でも、仕事の都合で親御さんの死に目に会えないことはあります。詳しくは申し上げませんが、神職の場合は、それがより高い条件で求められるということです。


また、当時私がいた神社ではお作法について厳しく指導されました。しかし、内容は至って基本的なことで「畳の縁を踏まない」など極々常識的なことです。ただ、それを所作としてしっかりと身につけて神職として恥ずかしくないような立ち振舞いが出来なければなりませんので、日々意識をしていました。あと、箒の掃き方ひとつから、掃除についても細かく指導を受けましたね。これは単に掃除の仕方を習得するだけではなく、どんな小さな仕事でも取り組む気持ち次第で、結果や出来栄えが違ってくるということです。そして、それは正に神事を執り行う際にも表れると思います。


ー伊藤神職の神事の際の振る舞いを拝見しますと、納得しますね


神社に入ってまもなく、当時の宮司さんから言われたことで印象的だったのが、「この仕事は一般の会社員の仕事と比べて楽かもしれません。ただ、毎日毎日、毎年毎年、同じ仕事をしていく難しさがある。そうでなければいけないし、それが神職という仕事です」と指導を受けたことです。

当時、大学卒業直後の私には理解できませんでしたが、今ならその言葉が少し分かるような気がします。同じ事を、同じ様に繰り返し行うは一見簡単で当たり前のように思えますが、当たり前の事を当たり前に行う事は、実は難しいことなんです。


神職という仕事は、時代の流れに応じて、変化が必要になる事もありますが、しっかりと将来へ継承していかなければならない事も多いのです。


ー第二回に続く


※聞き手:エモーションクリエイターズ 金子明彦(神社広報担当) 

※次回(二回目)は伊藤神職より玉前神社の印象やご祭神の「玉依姫命」についてお話をいただく予定です。


※次の記事(第二話)

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